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POMのフライス加工精度を高める完全ガイド

POMのフライス加工精度を高める完全ガイド

POM(ポリアセタール)は、耐摩耗性や寸法安定性に優れたエンジニアリングプラスチックであり、フライス加工に広く利用されています。しかし、金属とは異なる性質を持つため、精度を高めるためには専用の切削条件や加工ノウハウが欠かせません。本記事では、フライス加工でPOMの精度を安定的に確保するための実践的な知識を徹底解説します。

POMの特性と加工における課題

POMは高結晶性樹脂であり、熱膨張係数が大きい一方で剛性が高いため、切削加工に適した素材といえます。ただし、加工中の発熱により寸法誤差が発生しやすく、特に薄肉部品や精密部品では変形や反りが問題となります。さらに、切りくずが絡まりやすいため、適切な工具選定やクーラント使用が重要です。

POMのフライス加工条件

切削速度と送り速度

POMをフライス盤で加工する際、一般的な目安として以下の条件が推奨されます。

切削速度(Vc):150~300 m/min  
送り速度(f):0.05~0.3 mm/tooth  
切り込み量(ap):0.5~3.0 mm  
工具材質:超硬合金またはダイヤモンドコーティング

これらの条件を守ることで、加工面の表面粗さRa 1.6以下を安定して得ることができます。

クーラントの使用と熱対策

POMは熱による軟化が起こりやすいため、ドライ加工では表面が白化するリスクがあります。クーラントを適切に使用することで、切削熱を抑制し寸法安定性を高められます。ただし、過度な冷却は熱収縮による歪みを招く可能性もあるため、ミスト加工や間欠的なクーラント噴射が有効です。

フライス加工での精度確保のポイント

工具選定と摩耗管理

精度を左右する最大の要素は工具摩耗です。POMは比較的軟質であるため切削抵抗は小さいですが、長時間の加工では刃先の摩耗が進み、加工精度に直結します。工具寿命を延ばすためには、ダイヤモンドコーティングエンドミルや多刃タイプの工具が有効です。

クランプ方法と変形対策

POM部品はクランプ時の応力によっても変形が生じやすいため、加工治具の設計が重要です。真空チャックやゴムパッドを使用することで、ワークの変形を抑制しつつ安定した固定が可能となります。

POM加工におけるトラブルと対策

バリの発生

POMは靭性が高いため、切削後にバリが残りやすい傾向があります。これを防ぐためには、切削条件を最適化するとともに、仕上げ加工に高回転エンドミルを使用するのが効果的です。

寸法誤差

加工後の温度変化による収縮で寸法誤差が発生する場合があります。予防策としては、加工後に一定時間の自然冷却を行い、寸法が安定してから検査・組立に移行することが推奨されます。

まとめ:POMのフライス加工精度を安定させるために

POMはフライス加工に適した素材でありながら、精度を確保するには切削条件や治具設計、熱対策といった複数の要素を総合的に管理する必要があります。本記事で解説したポイントを押さえることで、安定した加工精度を実現し、製品品質を向上させることが可能です。

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