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POMと他のプラスチック素材を比較:密度とその他の特性の違い

プラスチック素材の選択は、製品の性能や使用目的に大きな影響を与えます。特にPOM(ポリアセタール)と他のプラスチック素材を比較する際には、密度が重要な要素となります。本記事では、POMと他のプラスチック素材の密度やその他の特性の違いに焦点を当ててご紹介します。POMの密度と他の素材との比較を通じて、製品設計や素材選定における重要な指標を見極める手助けを致します。素材選定の際にお悩みの方やプラスチック素材に興味がある方にとって、情報満載の内容となっております。是非ご覧いただき、プラスチック素材に関する知識を深めてみてください。

POM樹脂の基本

POM樹脂(ポリアセタール樹脂)は、非常に高い機械的強度と耐摩耗性を持つエンジニアリングプラスチックであり、様々な産業で幅広く使用されています。以下に、POM樹脂の概要と特性について解説します。

POM樹脂とは:定義と概要

POM(ポリアセタール)は、エチレンとホルムアルデヒドから生成される熱可塑性プラスチックで、非常に高い剛性と耐摩耗性を持っています。POM樹脂は、ポリエチレンやポリプロピレンに比べて耐摩耗性、耐化学薬品性が優れ、精密な機械部品の製造に最適です。

POMの密度と物性

  • 密度:POM樹脂の密度は約1.41〜1.43 g/cm³です。
  • 引張強度:約60〜70 MPa
  • 耐熱性:連続使用温度は約100℃であり、一時的には150℃まで耐えられます。
  • 弾性率:約2.8 GPa
POM樹脂は、耐摩耗性、低摩擦係数、耐薬品性が優れ、特に精密部品に要求される物理的特性を提供します。

POM樹脂の用途

POM樹脂は、以下のようなさまざまな用途に使用されています:
  • 機械部品:ギア、ベアリング、スライディング部品など。
  • 自動車部品:プラスチックギアや精密部品。
  • 家庭用品:水道管部品、電気機器の部品。
  • 電子機器:コネクタやスイッチ部品。
その優れた摩耗性能と機械的特性により、摩擦が発生しやすい環境で多く利用されています。

POM樹脂の特徴:長所と短所

長所
  • 高い機械的強度:POM樹脂は非常に高い耐荷重性能を持ち、耐摩耗性に優れます。
  • 耐薬品性:多くの化学物質に耐性があり、酸やアルカリにも強いです。
  • 低摩擦係数:摩擦抵抗が低いため、機械部品に適しています。
短所
  • 吸湿性:POM樹脂は水分を吸収しやすく、そのため長期間使用すると物性が劣化することがあります。
  • 難燃性:高温下では燃えやすく、難燃性が低いです。
  • 加工の難易度:射出成形などの加工で高い温度が必要であり、コストが高くなることがあります。

POM樹脂の加工方法

POM樹脂は主に以下の方法で加工されます:
  • 射出成形:最も一般的な加工方法で、高精度な部品を大量生産するのに使用されます。
  • 圧縮成形:熱を加えて金型で成形する方法です。
  • 押出成形:連続的に製品を作成する方法で、フィラメントやシートに加工されることが多いです。
  • 機械加工:フライス加工、旋盤加工など、精密な機械部品の製造に使用されます。
POM樹脂は加工中に高温に耐える必要があるため、適切な加工条件を確保することが重要です。

POMとMCナイロンの比較

POM(ポリアセタール樹脂)とMCナイロン(メタクリルナイロン)は、どちらもエンジニアリングプラスチックで、機械的強度と耐摩耗性に優れた材料です。以下では、両者の基本情報と物理的特性を比較します。

MCナイロンの基本情報

MCナイロンは、ナイロン6(ポリアミド6)の一種で、非常に高い強度と耐摩耗性を持つエンジニアリングプラスチックです。MCはメタクリルを表し、改良された成形技術により、高い分子量を持つため、強度や耐摩耗性が優れています。
  • 化学成分:ポリアミド6(ナイロン6)
  • 特性:高強度、耐摩耗性、優れた衝撃吸収性、良好な加工性。
  • 用途:機械部品(ギア、ベアリング、スライディング部品など)、自動車部品、電子機器部品など。

ジュラコン(POM)とMCナイロンの物理的特性の比較

特性 ジュラコン(POM) MCナイロン(ナイロン6)
密度 約1.41~1.43 g/cm³ 約1.14~1.15 g/cm³
引張強度 約60~70 MPa 約70~90 MPa
耐熱性 約100℃~150℃ 約80℃~100℃
耐摩耗性 優れた耐摩耗性 高い耐摩耗性
摩擦係数 低摩擦係数(滑らかで摩擦が少ない) 摩擦係数は高めで、潤滑が重要
吸湿性 低(湿気を吸収しにくい) 高(湿気を吸収しやすい)
耐薬品性 良好(酸、アルカリに対して耐性あり) 一部の化学薬品に対しては弱い(酸やアルカリ)
加工性 高精度な機械加工が可能 加工性が良好で、特に切削加工が得意

比較と選択基準

  • 引張強度と硬度:MCナイロンはジュラコンよりも若干強度が高く、特に耐衝撃性に優れています。耐摩耗性も優れており、重量の軽さも特長です。
  • 耐熱性:ジュラコンはMCナイロンよりも耐熱性が高く、100℃以上の温度環境でも使用可能です。MCナイロンは100℃以下での使用が推奨されます。
  • 吸湿性:ジュラコンは吸湿性が低いため、湿気の影響を受けにくいです。一方、MCナイロンは湿気を吸収しやすく、湿気を含むと物性が変化するため、乾燥環境での使用が推奨されます。
  • 摩擦係数:ジュラコンは低摩擦特性があり、潤滑なしでも摩擦を抑えることができます。MCナイロンは摩擦係数がやや高いため、潤滑が必要です。

エンプラの世界

エンプラ(エンジニアリングプラスチック)は、一般的なプラスチック素材よりも優れた機械的特性、耐熱性、耐薬品性を持つ高性能のプラスチックです。エンプラは主に機械部品や高機能部品に使用され、耐久性と安定性が求められる産業で広く活用されています。

エンプラ(エンジニアリングプラスチック)とは

エンプラは、プラスチックの中でも機械的特性、耐熱性、耐摩耗性、化学的安定性などの性能が高い素材を指します。一般的なプラスチックに比べ、エンプラは過酷な条件下でも安定した性能を発揮するため、精密機器、自動車、航空機、電気機器など多くの高性能な製品に使用されています。
  • 特長:高強度、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性
  • 用途:自動車部品、機械部品、電気・電子機器、航空機部品など

POMを含むエンプラ素材の比較

POM(ポリアセタール樹脂)はエンプラの一つで、特に耐摩耗性と低摩擦特性に優れています。以下に、POMを含むエンプラ素材とその特徴を比較します。
特性 POM(ポリアセタール) ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン) U-PE(超高分子量ポリエチレン)
密度 約1.41~1.43 g/cm³ 約1.04 g/cm³ 約0.93 g/cm³
引張強度 約60~70 MPa 約40~50 MPa 約30~40 MPa
耐熱性 約100℃~150℃ 約80℃~100℃ 約80℃~100℃
耐摩耗性 高い耐摩耗性 中程度 高い耐摩耗性
耐薬品性 良好(酸、アルカリに対して耐性) 良好(アルカリや弱酸に耐性) 優れた耐薬品性
加工性 優れた加工性 良好(成形性が良い) 中程度(高粘度)
吸湿性 低吸湿性 中程度 低吸湿性

各素材の特徴

  1. POM(ポリアセタール)
    • 特徴:POMは高強度、耐摩耗性、低摩擦特性に優れ、機械部品やベアリングなどに使用されます。温度変化や湿度変化に強く、安定した性能を提供します。
    • 用途:ギア、ベアリング、歯車、スライディング部品など。
  2. ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)
    • 特徴:ABS樹脂は衝撃強度が高く、耐薬品性や耐熱性も持っていますが、POMと比較すると耐摩耗性や強度はやや劣ります。軽量で加工性が良く、コストパフォーマンスにも優れています。
    • 用途:家電製品、車の内装部品、電気・電子機器など。
  3. U-PE(超高分子量ポリエチレン)
    • 特徴:U-PEは非常に高い耐摩耗性、低摩擦特性を持つエンプラ素材です。化学的耐性や耐寒性にも優れており、極端な環境下でも使用可能です。
    • 用途:スライディング部品、耐摩耗部品、高強度のベアリングなど。

比較と選択基準

  • 強度と耐摩耗性:POMは特に高い耐摩耗性を持ち、耐摩耗部品や動的な環境に適しています。U-PEも耐摩耗性に優れていますが、POMほどの強度はありません。
  • 耐熱性:POMが最も高い耐熱性を持ち、特に高温環境での使用に適しています。ABSとU-PEは比較的低温環境で使用されます。
  • 耐薬品性:POMとU-PEは耐薬品性が高く、化学薬品を扱う環境に適しています。ABSは一部の薬品に弱いですが、耐衝撃性が優れています。
  • 加工性:ABS樹脂は成形性が良いため、コスト面での利点があります。POMは精密加工に優れていますが、U-PEは粘度が高いため加工が難しい場合があります。