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プラスチックの選び方:POM材の色の種類とその特徴

プラスチックは、私たちの日常に広く使われている素材の一つです。その中でもPOM材は、その耐久性や機能性からさまざまな用途に利用されています。しかし、POM材の中でも色の選択は重要なポイントとなります。本記事では、POM材の色の種類とその特徴について詳しく解説していきます。適切な色のPOM材を選ぶことで、製品の見た目や性能を向上させることができます。色によって異なる特性や使いどころを知ることで、より効果的にPOM材を活用していくためのヒントを得ることができるでしょう。では、POM材の色の選び方について、詳しく見ていきましょう。

プラスチックの基本

プラスチックの定義と歴史

プラスチックとは、化学的に合成された高分子化合物で、加熱や圧力を加えることによって形を変え、冷却することで固体化する特徴を持っています。元々は天然素材の樹脂から作られましたが、現在では石油を原料とした合成樹脂が主流です。
  • 歴史:
    • 19世紀後半、最初の合成プラスチックであるベークライトが発明され、これがプラスチック産業の発展を促しました。
    • 20世紀初頭には、ナイロンポリエチレンが登場し、プラスチックの用途は急速に広がり、日常生活や産業で欠かせない材料となりました。

プラスチックの種類と一般的な特性

プラスチックは、使用目的に応じてさまざまな種類があります。大きく分けて、熱可塑性プラスチック熱硬化性プラスチックの2つのカテゴリに分かれます。
  • 熱可塑性プラスチック:
    • 特徴: 高温で柔らかくなり、冷却すると再び硬化する。繰り返し加熱・冷却が可能。
    • 代表例: ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)など。
  • 熱硬化性プラスチック:
    • 特徴: 一度加熱・硬化すると再度加熱しても柔らかくならない。化学反応によって硬化するため、強度が高い。
    • 代表例: ベークライト、エポキシ樹脂、フェノール樹脂など。

一般的な特性

  1. 軽量性: プラスチックは金属よりも軽く、加工しやすいため、さまざまな製品に利用されます。
  2. 耐腐食性: 酸やアルカリに強いため、錆びにくく、長期間使用が可能です。
  3. 絶縁性: 電気を通しにくいため、電子機器などにも利用されます。
  4. 耐熱性・耐寒性: 特定のプラスチックは高温・低温に耐えることができます。
  5. 成形性: 加熱して溶かすことで、型に流し込んだり圧縮したりしてさまざまな形に成形できます。

プラスチック選びのポイント

プラスチックを選ぶ際には、製品の用途や求められる特性を考慮することが重要です。以下のポイントを参考に選定します。
  1. 用途に適した特性を持っているか:
    • 強度、耐熱性、耐薬品性など、製品が使用される環境に最適なプラスチックを選びます。
  2. 加工方法の対応:
    • 成形方法(射出成形、押出成形など)に適したプラスチックを選ぶことで、製造効率やコストを最適化できます。
  3. コストパフォーマンス:
    • 素材のコストと性能を比較して、予算に合ったものを選びます。
  4. 環境への配慮:
    • 生分解性プラスチックやリサイクル可能なプラスチックを選ぶことで、環境にやさしい選択ができます。
  5. 安全性:
    • 食品容器や医療機器など、安全性が重要な用途では、食品衛生法に基づいた材料や認証を確認することが大切です。

POM材(ポリアセタール)の基礎知識

POM材の特性

POM(ポリアセタール)は、優れた機械的特性を持つエンジニアリングプラスチックです。化学的には、ポリオキシメチレン(Polyoxymethylene)とも呼ばれ、特に精密な機械部品や耐摩耗性を必要とする部品に適しています。

主な特性

  1. 高い機械的強度:
    • POMは、非常に高い引張強度と耐摩耗性を持ち、耐荷重性に優れています。
  2. 低い摩擦係数:
    • 摩擦抵抗が低いため、滑りやすい部品に最適です。
  3. 優れた耐薬品性:
    • 多くの化学薬品に対して耐性を持ち、特に油や溶剤に強いです。
  4. 優れた寸法安定性:
    • 熱膨張が少なく、寸法の安定性が高いため、精密部品の製造に向いています。
  5. 耐衝撃性と耐疲労性:
    • 衝撃に強く、疲労による劣化に対しても高い耐性を示します。
  6. 加工性:
    • 加工がしやすく、精密な部品や複雑な形状の加工が可能です。

POM材の用途

POMはその優れた機械的特性を活かして、さまざまな用途で利用されています。
  1. 自動車産業:
    • ギア、ベアリング、歯車、ロッカーアーム、カムなどの機械部品に使用され、耐摩耗性や耐衝撃性が重要視されます。
  2. 家電製品:
    • 小型モーター部品、コネクタ、スイッチなど、耐熱性と耐薬品性を必要とする部品に使われます。
  3. 医療機器:
    • 生体適合性が求められる部品や、化学薬品を扱う機器に使用されることがあります。
  4. 精密機器:
    • 精密な動作が求められる機械部品、例えば時計の歯車などにも利用されます。
  5. 食品機械:
    • 食品産業向けに、腐食性に強い材料が求められるため、POMは食品機械にも利用されます。

ジュラコンとは

ジュラコンは、POM樹脂の商標名で、特に品質の高いPOM製品として知られています。デュポン社(現在はデュポン・ダウ・エラストマー)が製造する高精度のPOM素材であり、一般的には機械的強度や耐摩耗性、低摩擦性が求められる部品に使用されます。
  • 特徴:
    • ジュラコンは、他のPOM材に比べて一貫した品質と信頼性が高いため、精密部品や高機能部品に多く利用されています。
    • 特に耐摩耗性や摩擦係数の低さが特徴であり、高負荷環境でも安定した性能を発揮します。
    • ジュラコンは、POMの一般的な特性を持ちながらも、より優れた加工精度と耐久性を提供します。

POM材の色の種類と特徴

POM材のカラーバリエーション

POM材にはさまざまなカラーバリエーションがあります。色によって用途や特性が異なるため、適切な色選びが重要です。以下に代表的な色とその特徴をまとめます。

主な色の種類

特徴・用途
白色 標準的なPOMの色。一般的に使用され、機械部品や精密部品に多く見られる。
黒色 安定性や耐久性が高く、耐薬品性や耐摩耗性を強化するために使用される。
青色 化学的な標識や識別用として使用されることが多い。
透明色 視覚的に部品の内部構造を確認したい場合に使用。
その他の色 緑色、赤色、黄色などがあり、用途に応じて着色される。

色による性質の違い

色によってPOMの性質が変わることがあります。特に黒色や透明色には、以下のような性質の違いがあります。
  1. 黒色のPOM:
    • 紫外線や耐熱性が向上することがあり、摩擦抵抗が低くなることもあります。
    • 高耐久性を求められる部品や、屋外で使用される部品に適しています。
  2. 白色のPOM:
    • 純粋な化学的安定性が求められる用途に適していますが、汚れや変色が目立ちやすいです。
    • 精密部品や機械部品に使用されることが多いです。
  3. 透明色のPOM:
    • 光学的特性や透明性が求められる用途に使用されますが、物理的強度がやや低くなることがあります。
  4. 着色による影響:
    • 特定の着色料や添加剤が耐薬品性や摩耗性を向上させることがあります。例えば、強化された着色のPOMは、特定の化学物質に対する耐性が強化されます。

色の選択基準

POM材の色選びは、使用目的や求められる性能に基づいて決定されます。以下の基準を参考にして色を選ぶことができます。

色選びのポイント

  • 用途に応じた識別:
    • 部品や製品の種類を識別しやすくするために色分けされることがあります。工業用の部品や製造業のラインでは識別のために色が使用されます。
  • 耐久性と性能:
    • 高い耐久性や摩耗性、紫外線や熱に対する強度が求められる場合には、黒色などが選ばれることが多いです。
  • 視覚的な外観:
    • 美観やデザイン性を重視する用途では、色が選ばれることがあります。特に、装飾品やデザイン部品においては色が重要な要素です。
  • 規格や業界基準:
    • 医療機器や食品業界など、特定の業界基準に基づき色が選ばれることがあります。安全基準や規格に従って色が決められることが多いです。
  • コスト:
    • 色付きのPOMは着色料や添加剤が加わるため、コストが高くなる場合があります。大量生産を行う場合、コスト効率を考慮して色が選ばれます。
これらの基準を踏まえ、POM材の色を選ぶことで、性能や外観、コストに適した製品を作り上げることができます。

ジュラコン(POM)とMCナイロンの比較

それぞれの材質の特徴

ジュラコン(POM)の特徴

特徴 詳細
耐摩耗性 非常に優れた耐摩耗性を持ち、摩擦の多い部品に最適。
耐薬品性 多くの化学薬品に耐性があり、特に油や溶剤に強い。
剛性 高い剛性を持ち、構造部品に適している。
寸法安定性 熱膨張が少なく、長期間の使用にも安定した寸法を保つ。
成形性 高い流動性を持ち、複雑な形状の部品にも適用可能。
耐熱性 一定の温度範囲内では良好な耐熱性を発揮するが、高温には注意が必要。

MCナイロンの特徴

特徴 詳細
耐摩耗性 高い耐摩耗性を持ち、摩擦の多い部品にも優れた性能を発揮する。
耐薬品性 酸やアルカリに対して強いが、油脂や有機溶剤に対しては弱い。
剛性 高い剛性を持ち、機械部品に適した材質。
吸水性 水分を吸収しやすく、湿気の影響を受けることがある。
耐熱性 中程度の耐熱性を持ち、通常の使用温度範囲では安定している。
加工性 加工がしやすく、機械的性質を維持したまま切削や成形が可能。

用途に応じた適切な材質の選び方

用途 ジュラコン(POM) MCナイロン
摩耗部品(ギア、ベアリング) 優れた耐摩耗性と低摩擦特性で最適 高い耐摩耗性を持つが、ジュラコンの方が有利
耐薬品部品(化学工業) 多くの化学薬品に強く、特に油や溶剤に優れた耐性がある 酸やアルカリには強いが、油や溶剤に弱い
高温環境 高温に弱いため、使用温度が高くない環境に最適 中程度の耐熱性を持つため、温度範囲が限られている
機械構造部品(部品カバー、機構部品) 高い剛性と寸法安定性が求められる部品に最適 剛性が高く、機械部品として十分に使用可能
水中部品 水に強いが吸水性が少ないため、水中で使用する部品にも適用可能 吸水性が高く、水中での使用には注意が必要

耐久性と加工性の違い

耐久性

  • ジュラコン(POM):
    • 耐摩耗性や耐薬品性が非常に高いため、長期にわたる使用でも高い性能を維持します。
    • 特に摩擦部品や化学薬品を扱う環境での使用に適しています。
    • MCナイロン:
    • 耐摩耗性も高いですが、吸水性があるため湿気の影響を受けやすいです。
    • 長期間使用する場合、湿度や水分の影響に注意が必要ですが、乾燥した環境下では非常に優れた耐久性を発揮します。

加工性

  • ジュラコン(POM):
    • 成形性が良好で、複雑な形状や精密な部品の加工に向いています。
    • 熱膨張が少ないため、安定した寸法精度を保つことができます。
  • MCナイロン:
    • 加工性が良く、切削や成形が容易であり、複雑な部品にも対応可能です。
    • 加工後の寸法安定性はジュラコンに劣りますが、加工がしやすいため、多様な形状を作成することができます。

プラスチック加工の基礎

加工方法の種類

プラスチックの加工にはさまざまな方法があります。それぞれの加工方法に応じて、適切な選択をすることが重要です。
加工方法 説明 特徴
切削加工 高精度で部品の形状を作成するために使用される方法。 高精度な寸法が求められる部品や、複雑な形状を加工する際に適用。
射出成形 溶けたプラスチックを金型に注入して形を作る方法。 高速で大量生産が可能。複雑な形状にも対応できる。
押出成形 プラスチックを加熱して押し出し、連続的に成形する方法。 長尺部品やシート、フィルムの製造に適している。
ブロー成形 熱したプラスチックを膨らませて成形する方法。 空洞部品の製造や薄肉製品に適用される。
圧縮成形 高温で加圧し、プラスチックを金型に圧縮して成形する方法。 複雑な形状や高精度が必要な部品に適用される。
レーザー加工 レーザー光を使用して、プラスチックを切断・穴あけする方法。 高精度な切断が可能で、微細加工にも対応できる。

POM材の加工技術

POM(ポリアセタール)材の加工は、他のプラスチックと同様に精度を重視する必要がありますが、特に以下の加工技術が重要です。
加工技術 説明 特徴
切削加工 POMは切削性が高く、複雑な形状の部品を高精度で作成可能。 刃物による加工で精度を重視したい部品に最適。
フライス加工 平面や溝、複雑な形状の加工に使用される方法。 切削面が美しく、寸法精度が高いため、特に精密部品に適している。
旋盤加工 円形の部品を加工するための方法。 高速回転する素材に対して精密に加工が可能。
熱成形 POMを加熱して成形する方法。 複雑な形状や大きな部品にも対応可能。
溶接 熱や圧力でPOMを溶かし、他の部品と接合する方法。 部品同士をしっかり接合でき、強度のある接合部を作ることができる。

加工時の注意点

POMは優れた特性を持つ材料ですが、加工時にはいくつかの注意点を考慮する必要があります。

1. 熱膨張の管理

POMは温度変化に敏感で、加工中に膨張や収縮が起きることがあります。これにより寸法精度が変動するため、冷却方法や加工温度を適切に管理することが重要です。
  • 冷却液の使用: 切削やフライス加工時に冷却液を使用し、摩擦熱を低減。
  • 適切な加工速度の調整: 加工速度を適切に調整し、過度な熱の発生を避ける。

2. 切削工具の選定と管理

POMは硬度が高いため、適切な切削工具の選定が必要です。また、切削工具は摩耗が早いため、定期的な交換やメンテナンスも大切です。
  • 工具の適切な選定: POMに適した切削工具を使用することで、摩耗を抑え、精度を保つ。
  • 定期的な工具のメンテナンス: 刃先が鈍る前に工具を交換し、加工品質を維持。

3. 切りくずの処理

POMの加工時には切りくずが発生しますが、切りくずが詰まると加工精度が低下するため、スムーズな排出が求められます。
  • 切削条件の調整: 送り速度や切削速度を調整して、切りくずをスムーズに排出。
  • 切りくずの定期的な除去: 工具のメンテナンスや切りくずの除去を行い、詰まりを防ぐ。

4. 加工精度の管理

POMは変形しにくい素材ですが、加工時に微細な変動が生じることがあります。精度を保つためには、加工条件の最適化が求められます。
  • 試作加工: 本加工前に試作を行い、最適な加工条件を確認。
  • 加工条件の最適化: POMの特性に合わせて、切削条件を微調整することが重要です。

POM材の選定と応用例

機械部品への応用

POM材は、その優れた機械的特性から、さまざまな機械部品に広く使用されています。特に摩擦や摩耗が問題となる部品に最適です。
応用部品 特徴 使用例
ギア 摩耗に強く、摩擦係数が低いため、滑らかな動作が可能。 精密ギアや小型モーターのギア、駆動ギアなど。
ベアリング 耐摩耗性と耐衝撃性に優れており、長期間の使用が可能。 小型機械や精密機器でのベアリング。
スライド部品 低摩擦特性によりスムーズなスライド運動が可能。 リニアガイド、スライド部品など。
パイプとバルブ 高い化学的安定性と機械的強度を持ち、長期間の使用に耐える。 化学プラントや水処理設備でのパイプやバルブ。
ピストン 高い圧縮強度を持ち、耐摩耗性にも優れている。 自動車エンジンのピストンや機械式ポンプのピストン。

その他の産業での使用例

POM材は機械部品に限らず、さまざまな産業で利用されています。以下はその応用例です。
産業 応用例 特徴
自動車産業 部品や機構の軽量化、高耐久性を必要とする部品。 摩耗抵抗が求められる部品や高精度の部品に使用される。
家電産業 各種家電機器の可動部分や内部部品。 耐摩耗性、衝撃吸収性に優れ、音が静かで機能性が高い。
医療機器 精密機器の部品、耐薬品性が必要な部品。 高い耐薬品性や高精度が求められる部品に使用される。
食品産業 食品加工機械の部品、耐熱性が必要な部品。 食品に接触する機械部品であり、衛生的で耐久性が求められる。
電子機器 電気機器の絶縁部品、機械部品。 高い絶縁性、耐熱性が求められる。

応用選定のポイント

POM材の選定においては、用途に応じて適切な特性を考慮する必要があります。以下のポイントを参考にすることが重要です。
  • 摩耗耐性: 摩擦の多い部品には摩耗に強いPOMが適している。
  • 耐薬品性: 化学的な安定性が求められる環境では、POMの優れた耐薬品性が重要。
  • 加工性: 高精度な加工が必要な場合、POMは切削性が良好なため選ばれる。
  • 機械的強度: 高い強度と耐衝撃性が求められる場合、POMが有効な材料となる。