コラム column

ジュラコン®とPOMの違いを徹底比較:材料選定で失敗しないための完全ガイド

機械設計・部品加工の現場では「ジュラコン®(POM)とその違い」に悩む設計者が少なくありません。樹脂材料の選定では、名称・商標・物性の違いを理解することが重要です。本記事では、ジュラコン/POMの基礎から用途比較、選定・加工の注意点までを深掘りします。

ジュラコン®(POM)とは何か:名称・商標・材質の整理

POM(ポリアセタール)」は熱可塑性樹脂として広く用いられる材料であり、その中で商標登録された名称が「ジュラコン®」です。具体的には、例えば〈〈〈中略〉〉〉。材料技術解説では「ジュラコン®(POM・ポリアセタール)は…」と述べられています。
このように、**すべてのジュラコン®はPOMだが、すべてのPOMがジュラコン®ではない**という理解が設計上の第一歩です。

また、JISでは「〈〈〈中略〉〉〉」としてPOM材質に関する仕様が定められています。

POMの規格と名称の関係

用途・加工・仕様によって区分が変わるため、名称だけで選定するのは危険です。たとえば、POM-GF(ガラス繊維入り)など多数のバリエーションがあります。設計時は「商標+材質記号」の両者を確認すべきです。

ジュラコン®/POMの主な物性と設計への影響

POMは機械的強度・耐摩耗性・寸法安定性に優れており、部品設計において優れた材料選択肢となります。
以下に代表的な物性データ例を示します(各グレードにより異なります):

項目 代表値 単位
引張強度 60〜70(一般グレード) MPa
密度 1.41~1.44 g/cm³
吸水率(23℃ 24h) 0.2〜0.5 %
硬度(ショアD) 75~80

例えば、寸法安定性を求める構造部品の場合、吸水率が部品のクリアランスや動作精度に影響を及ぼします。実際に「ジュラコン(板と丸棒)の特性」では、JIS材質表示・引張強さなどの実測データが紹介されています。

物性差が生む設計上のリスク

  • 高負荷用途:強度や疲労特性の不足による寿命低下
  • 寸法精度重視用途:吸水・熱膨張によるクリアランス変化
  • 摩耗や摺動用途:表面摩耗や変形による機械的誤差

これらの観点から、「材質をただ“POM”と記載するだけ」では不足し、グレード・処理条件・製造履歴まで把握することが推奨されます。

ジュラコン®と他のPOMグレードの違い:比較表形式で理解

ここでは、一般的な「ジュラコン®標準グレード」と、ガラス繊維強化タイプや難燃タイプなどの代表的なPOMグレードの比較を行います。

材質名 主要特性 主な用途
ジュラコン®(標準) 高強度・良い加工性・良耐摩耗性 ギア、スライド部品、精密機構
POM-GF(ガラス繊維入り) 高剛性・高強度・やや重量あり 構造支持部品、機械フレーム部品
POM-FR(難燃タイプ) 難燃性を付加・電気絶縁性良 電気・電子部品、電源部品

材質を選定する際には「商標(ジュラコン®)」「グレード(標準/GF/FR)」「加工・使用環境条件」の三点を必ず確認しましょう。さらに、加工性やコスト・在庫などを含めた総合判断が必要です。

ジュラコン®選定・加工で失敗しないためのポイント

設計者・加工者双方にとって、材料選定での失敗はコスト・時間・信頼性面で大きな問題となることがあります。以下に、実務でよくある失敗例とその回避策を整理します。

よくある失敗例とその原因

  1. 名称混同による誤選定:POM/ジュラコン®を混同して他メーカーグレードを使用してしまった。
  2. 寸法変化無視:吸水・熱膨張を見落とし、クリアランスズレや動作異常が発生。
  3. 加工条件未確認:切削時のバリ・熱変形・摺動摩耗に対応できなかった。

回避のための設計チェックリスト

  • 材質名称と商標を明確に記載・確認する
  • 物性データを基にクリアランス設計・構造設計を行う
  • 加工前後の寸法・含水率・熱処理条件を明確にする
  • 実装環境(湿度・温度・荷重)を想定し、補正設計を行う

まとめ:ジュラコン®とPOMの違いと選定ガイド

「ジュラコン®(商標)とPOM(材質名称)」という名称の違いを理解し、実際の物性・用途・加工条件を比較することで、材料選定の成功確率は大きく高まります。設計精度・耐久性・コスト面で優れた部品を実現するためには、材質だけでなくグレード・加工条件・実装環境を含めた総合判断が不可欠です。